本記事では現役時代に東工大入試本番での物理の点数が30/150点という絶望的な状況により不合格となってしまったが、浪人時代を経て、1年後の入試で135/150点を叩き出し合格し、挙句の果てには大学でも物理学を専攻している著者の経験を綴っていきたい。
あくまで一例だが、どのようにして物理ができるようになったのか、勉強法など受験生の皆さんの参考になれば幸いである。
現役時代
まず、現役時代の私はそれほど物理が得意ではなかった。最も得意だったのは化学であり、大学では化学科に進学するつもりでいた。
ただ、東工大入試において物理という科目の重要性はもちろん知っていたのでそれなりに勉強していたのだが、化学・数学に比べて得点が伸び悩んでいた。(どうして得点が伸びないのか現役時代には知ることができず、その理由が判明したのは浪人を経て合格した後の話である。)
正直伸びる気配がないことは自分でも薄々気づいていたので、最終的には『化学・数学で稼ぎ、物理はそこそこ・平均くらい取れればいいや』という戦略で入試に臨むことにした。
2016年度 東工大入試
私が現役時代に受けた年は2016年度入試である。
この年の東工大物理はGoogleで「東工大 物理 2016」と検索すると、以下の候補が出てくるくらい難化した年であった。
※ちなみに、”レジェンド”というのは難易度評価「易・普通・難」の枠に収まらない、「難」のさらに上、伝説的に難しい年に称される東工大入試界隈では有名な言葉である。各科目、そのレジェンドと呼ばれる年が存在し、最近で言うと以下の通りである。
・数学:2019年
・英語:2015年
・物理:2016年
・化学:2011年
実際に受けた当時の記憶は6年近く経った今でも悪夢のように鮮明に覚えている。
大問ごとに当時の状況を振り返りたい。
大問1は予想通り力学の問題であった。設定もそれほど複雑そうではなく解きやすそうな印象を受けた。
普通にはじめから(a)を解いてみるが、ここで異変に気づく。
...........(a)から早速解けないのだ
運動方程式か?、運動量保存則か?、いやエネルギー保存則か?自分の脳みそに存在するあらゆる解法を試してみたが、どうしても解けない。
一応(b)以降も見てみるが、物理選択者は経験的に知っている、物理は問題が歯車的に関連していることを。前の問題が解けなければその後続の問題は普通は解けない。
中問として[B]というより複雑な設定の問題が展開されるわけだが、[A]の(a)がわからないような奴が解けるはずがない。
結局、私は試験終了まで(a)を解くことはできなかった。大問1の解答用紙はほぼほぼ空白に近い状態であった。
ちなみに、この(a)は運動方程式や保存則以前に『小球が糸に繋がっているという束縛条件』により解く問題であった。
私の現役時代の拙い脳内では、『力学はとりあえず運動方程式かエネルギー保存則、運動量保存則、剛体っぽいならモーメントのつり合いでいけるでしょ!』というふわふわした曖昧な理解であった。
それゆえ「束縛条件」というより根本的・基礎的なことを疎かな理解のままにしていた。そして東工大はそれを許しはしなかった。
大問2も予想通り、電磁気学であった。電磁気回路の問題であるのはすぐ気づいたが、回路の見た目の複雑さに圧倒された。
さらに大問1の件もあり、私は軽くパニックを起こしていた。ただ、そうも言っていられないので(a)から取り組んでみる。
.......(a)が解けない...
大問2も恐ろしいことにはじめから分からなかったのだ。
ここは円形ループにおけるファラデーの法則を適用するだけなのだが、私の電磁気学の知識は力学よりも酷く、ゴチャゴチャで整理されていなかった。『誘導起電力?公式V=vBlでしょ、それとレンツの法則!』とうっっっすい理解であったので、第一原理であるファラデーの法則に立ち返る発想は当時の私にはなかった。東工大物理のように少し捻られただけで、ボロボロと崩れてしまう貧弱な理解であったと痛烈に思い知らされた問題であった。
もちろん(b)以降も解けるわけがなく、大問2は大問1よりもひどい出来であった。
大問1、2を経て、私はもう完全にパニック状態であった。『もう大問1,2はだめだ。せめて大問3だけは解けなければまずい…..』と。
まず、分野が熱力学であったことに安心した。ここは他の候補としては私の苦手な波動や現代物理学が出題される可能性があったためである。化学でも状態方程式を使う少し似たような問題には自信があった。いや正確に言うと、自信があると思い込んでいた。(a)から(c)までは自分なりに解き、答え自体は回答した。それ以降は難しい+私の勉強・訓練不足によりシンプルに解けなかった。
ちなみに、これは試験後に判明したことなのだが、
(a)の答えは間違えていた
もちろん、連鎖的に(b)(c)も間違えていた。
原因は水中の圧力(水圧)に関するアルキメデスの原理を正しく理解していなかったためである。熱力学の状態方程式やら熱力学第一法則やら以前に状態における圧力すら正しく求めることができなかったのである。
各大問ごとに述べていったが、みなさんお気づきの通りこの年の問題、私は実質的に1問たりとも答えに辿り着くことができなかった。文字通り「1問たりとも」である。
東工大の物理は大問3つに対し、時間120分という国立前期日程の中ではではありえないくらい長い試験時間である。また、解答欄には答えのみでなく簡単な導出過程を書く必要がある。
すべての大問で、前半どころか初っ端から分からなかったので、一応苦し紛れに導出過程欄にそれらしいことを書いていた。それが終わったの時間がたったの30分で、そのあと約90分はほとんどペンを動かす手は止まってしまった。もちろん残りの約90分は頭をフル回転させて解答用紙を埋めることに全力を注いだが、試験終了までに解けた問題は存在しなかった。
顔面蒼白のまま白紙に近い解答用紙を提出したことは悪夢のように覚えている。
あの絶望的な状況から物理の点数はとてつもなく悪いだろうことは容易に想像できた。自己採点はおろか解答速報さえ現実逃避で見たくなかったし、見なかった。そして物理の状況を他の科目でカバーすることができず、2016年度入試は不合格であった。
入試から3ヶ月後の5月ごろに大学から入試採点結果が郵送されるわけだが、私の物理の点数は30/150点、得点率20%であった。結果を見て初めに思ったことは
『….え?30点 も 取れていたの….?』
である。あの酷い出来具合なら10,20点くらいかなと思っていたので予想より高くて驚いた。苦し紛れにも導出過程には何かしら書いていたので、その分で点数をくれたのだろう。答え自体は1問も正解していないことは断言してもよい。入試前では90/150点(得点率60%)を目標にしていたため、それと比べるとカスみたいな点数であるが、それは現役時代の間違った勉強方法の然るべき結果である。
以上、私の絶望的な現役時代の話である。次回の記事では浪人時代でどのように勉強し、1年後の入試で135点を叩き出したのかについて述べていく。